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●第二十一回酒折連歌賞の入賞100選発表
~大賞 河﨑七海さんが応募42,029作品の頂点~
~小・中・高アルテア部門  大賞 花輪美月さん~

言の葉連ねて歌遊びの酒折連歌賞実行委員会 (廣瀬孝嘉実行委員長)は2月1日、第二十一回酒折連歌賞の入賞100選の発表を行なった。この連歌賞は1998年に山梨学院大学が『連歌の発祥地』とされる甲府市酒折にちなんで創設。実行委員長は「一般部門の大賞 文部科学大臣賞は河﨑七海さん(18歳 山梨)が、問いの片歌 “ 靴ひもをきつく縛って歩きはじめる ” に、“ まっていろセリヌンティウス必ず行くから ” と答えの片歌を詠み、応募42,029作品の頂点に立つ受賞となった。山梨県知事賞に関智弘さん(42歳 群馬)が、山梨県教育委員会教育長賞に藤中希叶さん(14歳 山口)が、甲府市長賞に村尾恒美さん(86歳 秋田)が輝いた。また、応募者の中から小・中・高校生対象のアルテア部門の大賞 文部科学大臣賞は花輪美月さん(13歳 山梨)が、問いの片歌 “ えんぴつが線路をえがくどこか遠くへ “ に、 “ 届くかな未来の僕へ『お元気ですか』“ と答えの片歌を詠み応募28,730作品の中から受賞した。二十一回は全国・海外から下は6歳から上は100歳まで4万句を超える作品が寄せられ、同一都道府県の山梨県から両部門で大賞・文部科学大臣賞が選ばれたのは、今回が初めて」と述べた。入賞100選は酒折連歌賞ホームページに掲載された。
◾️第二十一回酒折連歌賞概要◾️
山梨学院大学は、山梨県甲府市の酒折宮でヤマトタケルノミコトと山焚きの老人が片歌問答で歌を詠んだ(『古事記』『日本書紀』)、このことから酒折宮が連歌の発祥の地とされ、これにちなみ問いの片歌五・七・七に、答えの片歌五・七・七を重ねる歌あそびを1998年創設。二十一回を数える今回は、応募期間は2019年4月1日から2019年9月30日までの6か月。問いの片歌は、一 靴ひもをきつく縛って歩きはじめる、二 えんぴつが線路をえがくどこか遠くへ、三 椅子一つだれもいないのにだれかの匂い、四 AIもスマートフォンもああ届かない、五 小鳥用ひまわりの種にも賞味期限の五句。これらの問いの片歌一~五の中から一句を選び、答えの片歌を五・七・七でつくって応募してもらった。なお、提示された問いの片歌五句すべて、また、応募句数にも制限なしで募集した。選考は宇多喜代子(俳人)・三枝昻之(歌人)・今野寿美(歌人)・井上康明(俳人)・もりまりこ(歌人)・辻村深月(作家)の6人の選考委員が10月の上旬から選考を開始し、2020年2月1日に酒折連歌賞ホームページなどで公表となった。
◾️一般部門受賞者◾️
大賞 文部科学大臣賞 河﨑七海さん(18歳 山梨県立都留高等学校)
【問いの片歌】 靴ひもをきつく縛って歩きはじめる
【答えの片歌】 まっていろセリヌンティウス必ず行くから
《選評》井上康明 先生 
 問いの片歌は、ささやかな一瞬の何かをはじめようとする人の姿を想像しました。その場面をどのような状況に設定するのか、答えの作者に尋ねるような気持ちで作りました。河崎七海さんの答えの片歌のこのセリヌンティウスは、太宰治の小説「走れメロス」の登場人物です。主人公メロスが、処刑される自らの身代わりに、暴君ディオニスのもとに預けた親友です。「まっていろ必ず行くから」とはメロスのセリヌンティウスへの呼びかけの言葉。友人の生命と何よりも信頼を裏切らぬため、切羽詰まった心情を命令形で表しています。この切迫感は、問いのこれからはじまりそうな雰囲気を覆す驚きがありました。 
山梨県知事賞 関 智弘さん(42歳 群馬県)
【問いの片歌】 小鳥用ひまわりの種にも賞味期限
【答えの片歌】 太陽に頭を垂れて謝罪会見  
《選評》今野寿美 先生 
 がっくりと花首を折って立ちつくすひまわりの姿は、真夏の晴れ晴れしさとの落差から心情に訴えるものですが、枯れ色の花には小鳥やリスを喜ばせる種がすでにぎっしりと詰まっています。種を宿したひまわりのあわれさに、世間で頻々とくり返される謝罪会見を直接結んで見せた関さんの句。もちろん、ひまわりが小鳥を喜ばせるのと大違いで、型どおりの文言に、揃って頭を下げるときの下げ方も練習したかと思うほど一様である現実はみっともないだけですが、両者を結ぶところに風刺の意味が立ち上がります。その手際が鮮やかでした。
山梨県教育委員会教育長賞 藤中 希叶さん(14歳 山口県岩国市立麻里布中学校)
【問いの片歌】 AIもスマートフォンもああ届かない
【答えの片歌】 だからこそ糸電話がねあるんじゃないか
《選評》三枝昂之 先生
問いの片歌を投げかける作者はさまざまな答を想定するのですが、藤中さんの答は私が想定しているもっとも多いプランの一つでした。届かないときにどうするか、高度な機具よりもやはりマンツーマンのコミュニケーション。藤中さんの答も同じですね。それにも関わらず評価がなぜ高かったのでしょうか。まず糸電話という幼時を思わせる素材のなつかしいです。AIとの落差が大きいその選択が楽しい。そして「あるんじゃないか」というごく平たい暮らしの言葉です。どんなに高度な文明も人間の暮らしの温感にはかなわない。そんなオーソドックスなプランを個性的に生かした。その共感度の高さが評価の決め手でした。 
甲府市長賞 村尾 恒美さん(86歳 秋田県)
【問いの片歌】 椅子一つだれもいないのにだれかの匂い
【答えの片歌】 じいちゃんはエッシャーの絵の中に入ったよ
《選評》宇多喜代子 先生
椅子に居たのは誰だったのか、そんな謎解きのような「問いの片歌」には、じつにさまざまな想像上の誰かを登場させた答えが寄せられました。姿が見えないのですから、おのずと「だれかの匂い」の「匂い」に頼った片歌がおおく目につきました。中に「なぜ椅子がこんなところに置いてあるんだ」という答えがあり、選をしていた手を止めて、なぜだろうと考えてしまいました。総じておもしろい答えがおおく、姿のないところに登場させる人に選ばれたのは母、祖母、愛するひと、愛するペットなどであることを微笑ましく思ったことです。 
◾️アルテア部門受賞者◾️
大賞 文部科学大臣賞 花輪 美月(13歳 山梨県甲府市立東中学校)
【問いの片歌】 えんぴつが線路をえがくどこか遠くへ
【答えの片歌】 届くかな未来の僕へ「お元気ですか」
《選評》もりまりこ 先生
 えんぴつが描こうとしているのは未来。アルテア賞の答えの片歌の中では、よく見かける「未来」という言葉ですが、その中でもまっすぐ胸に響いてきたのは、未来のじぶんに向かって、「お元気ですか」とのどかな挨拶が放たれたこの作品でした。少しだけ背伸びしたい思いをしまって、向こう側にいるじぶんに声を掛けてみる。そんな表現ができるのは、今のじぶんへの肯定であるような気がして。じぶんにノーを言いたい日もあるかもしれないけれど、今はイエスと言ってみる。そんな「僕」への信頼を感じるてらいの無さと力強さを感じるとても魅力的な作品でした。
▷なお、第二十一回酒折連歌賞の表彰式は2月15日全応募作品を対象とした一般部門の大賞と、小・中・高校生の作品を対象としたアルテア部門には、文部科学大臣賞と山梨日日新聞社賞・読売新聞社賞・朝日新聞社賞産経新聞社賞・毎日新聞社賞・山梨新報社賞・山梨放送賞・テレビ山梨賞の賞状と副賞が授与さる。山梨県知事賞・山梨県教育委員会教育長賞・甲府市長賞には賞状と副賞が授与される。
◾️実行委員長インタビュー◾️
廣瀬孝嘉実行委員長は「酒折連歌賞も第二十一回の表彰式を迎えることになりました。これも偏に、多くの方々から温かいご支援・ご協力をいただいた結果だと心から感謝しております」と深く頭を下げる。酒折連歌賞は「二十回の節目を過ぎ、今回は『新たな船出』という気持ちで取り組んで参りました。お蔭様で前回に引き続いて4万句を超える作品が寄せられました。多くの方々にご応募いただき、嬉しい限りでございます」と振り返り謝意を表す。応募者は「下は6歳から上は100歳まで、実に幅広い年齢層から作品が寄せられました。10代の応募が7割を占めていることに変わりはありませんが、ここのところ、60代、70代の作品が増加傾向にあり、更なる裾野の広がりを期待しているところです。また、全国47都道府県のすべてと海外11か国からご応募いただいていることも大変嬉しいことでございます」と10回大会の5万句から3万句強と低調していた句数を、実行委員長自ら普及活動で高校訪問を行うなどして四万句台に引き上げ2年連続堅持している。「今回は一般部門の大賞・文部科学大臣賞に都留高校の生徒が、アルティア部門の大賞・文部科学大臣賞に甲府東中学校の生徒が山梨県から選ばれました。同一都道府県から両部門で大賞・文部科学大臣賞に選ばれたのは、今回が初めてですが、両校には、毎年、学校を挙げて参加していただいております。このような活動が実を結んだ結果となり、事務局としても素直に喜んでいるところです。こうした言葉遊びのたのしみをさらにさらに広げていきたいと願っています」と日本文学の振興、文化の創造に資する活動への熱い想いを語った。

文(H.K) 、写真(本人及びアートボックス・シーデザイン提供) 2020.2.1